メーカーによる違い
それぞれのメーカーが自社の個性を出した楽器を製作しています。
ここのコメントは優劣ではなく傾向としてご覧ください。
普及モデルフルート ムラマツ 言わずと知れた日本のフルートの元祖メーカー。ちょっとダークで良く響き、息のポイントをはっきり示してくれることから、練習者を育ててくれます。
どちらかと言えば、奏者がドライブするより楽器の方が鳴ってくれるタイプのメーカーで、EX、GX共にGoodです。普及モデルとしてはちょっと値が張るADモデルは音質・メカニズム・耐久性共にアマチュアには十分な性能を持っていますので、このモデルが物足りなくなったら相当にうまくなったと言えるでしょう。当店ではこのADモデルがフルートの標準と考えています。サンキョウ 高品質で妥協のない作りは普及モデルから生かされており、ムラマツとは対照的なライトで明るく若干細身な音色をしています。特にきらびやかな高音域はこのメーカーの特徴です。ただし、鳴らす息のポイントが薄いので奏者との相性がありますが、相性が合うとレスポンスの早いコントロールの付けやすい楽器です。どのモデルも良くできていますが、特に一番安価な【エチュード】がおすすめです。
このメーカーではNew E-mechanismが付いたものがありますが、中音域のAが若干つまり気味になってしまいます。Gisキーを開けることで解消できますが、ちょっと面倒ですね。ヤマハ 総合楽器メーカーですが、フルートに関してはずいぶん研究していますので、安心して使用できます。ちょっと個性に乏しい音色のところもありますが、量産体制は実に優れていて、安価で高品質な楽器を作っています。特におすすめは安価なYFL-211S/2、YFL-311/2です。この価格でE-mechanismが付けることができるのはさすがにヤマハならではです。反対にYFL-351、YFL-451はおすすめできません。見た目の高級感はありますが、材料から見て割高なのとキーカップが小さいため、タンポが狂いやすく、修理もしにくいため維持費が結構かかります。 アルタス お店によっては強力に薦めている店もありますが・・・
作りがごついのと鳴らすのに相当のパワーが必要なので普及モデルとしてはちょっと厳しいかも・・・パール ここ2年ほどで急に人気が出てきたメーカーです。このメーカーもお店や人によって評価がまちまちなので、強力に推薦しているお店におまかせしています。人気の秘密は同じ材質なら価格が安価なのと、音色がちょうど今の時代にマッチしているのかも知れません。
普及品ではありませんが、【オペラ】はとても良い楽器だと思います。パール自身もこの楽器は他のモデルと一線を画す設計と作りをしていると言っています。ただし納期はムラマツのSRモデル並の2年以上ですが・・・ミヤザワ 先進的な考えで安価に高品質な楽器を作るノウハウを開拓しているところはとても評価できます。普及品でもキーの細かな仕上げの美しさと、台紙を使って丁寧にタンポあわせをしてる所は良心的で全体的にコストパフォーマンスの良いメーカーです。音色はとても楽に良く鳴るが、軽くどちらかと言うと薄い感じがするのと、微妙な音色の変化がつけにくいので否定的な先生もいます。(まあ、このクラスの楽器に微妙な音色の変化を求めるのは酷でしょうが)
特に10万円台の楽器はどのモデルもハイコストパフォーマンスです。ルーダルカート かつてのイギリスの名門メーカーでフルートの歴史を語るとき、必ず出てくる歴史に残る偉業を成し遂げてきたところです。近年ブージー&ホークス社の傘下に入り、日本ではクランポン社から販売されています。かつては高級品のメーカーでしたが、今、日本に入ってきているのは安価な2モデルだけです。
日本の繊細で丁寧な作りのフルートに対し、さすがにキーの仕上げは劣りますが、頭部管の作りはなかなかおもしろく、意外と整った音色が出せます。特に中音域は日本の楽器にない雰囲気があります。
ハンドメイドモデルフルート ムラマツ ムラマツのフルートで本当の意味のハンドメイドはやはりDNクラス以上になるでしょう。作るコンセプト自体もこのクラスになると、自分の音を表現するレベルの人を対象に作っているので、音色もレスポンスもよりシャープな反応が得られます。このクラスの楽器の場合モデルによってまちまちですが、製作には3ヶ月から4年近くの納期が必要です。また、製作に取りかかる前にオプション等の綿密な打ち合わせを行い、最終段階で、製作者と頭部管の仕上げについて打ち合わせをすることができます。ムラマツの場合はすべてのモデルに同じ頭部管をつけることを基本としているので、頭部管のタイプを選択することはできませんが、このクラスの楽器につける頭部管は最終段階で打ち合わせの上、奏者の音楽性に合わせた個性的なものを製作してもらえます。 サンキョウ サンキョウのハンドメイドはやはり非常にライトで明るい音がします。ムラマツよりも相性があり、奏者を選びます。相性がよい場合は、日本人が急にフランス人になってバリバリ演奏しているような劇的な変化をもたらしますが、そうでない場合は貧相な音になることも希にあります。また、弦楽器との相性はあまり良くないのでオーケストラよりピアノ伴奏のソロの方がよい傾向があります。頭部管はいろいろありますが、どれもサンキョウの音色の範囲に収まっているのがおもしろいですね。総銀製は銀管の上にさらに銀メッキがしてあり硫化による黒変を抑えていますが、そのことがオーバーホール時にバフがかけにくくなりちょっと困りものです。 ヤマハ ヤマハはさすがに大メーカーだけあって、とにかくいろいろな選択肢があります。アメリカ風、フランス風、ドイツ風、和洋折衷何でもござれですが、すべて日本人好みなちょっとウェットなとこがヤマハらしいといえます。ヤマハのハンドメイドはソルダードのトーンホールのものががおすすめ、引き抜きのものは意外と薄っぺらな鳴りがします。金の材質も、一般的には銅割りを使っているメーカーのが多いですが、ヤマハは銀割なので色が若干黄色っぽいのが特徴で、ちょっと堅い感じがします。ヤマハも銀管の上にさらに銀メッキがしてありバフがかけにくいので困ります。 パウエル 昔のパウエルは中身の詰まったポコッとした音色で、特に銀管は息がなかなか入りにくい楽器でしたが、最近のものはずっと息を吹き込める楽器になっています。伝統的なリアリティーのある音色は健在で、オーケストラの中でもしっかりした存在感を出してくれるし、ピアニシモで吹いても音色が薄くならないので根強い人気があります。反面派手さはないので、ソロではったりを聞かせるときには?かも知れません。頭部管の種類も選ぶことができます。 ヘインズ 製造番号30000台の楽器は云々とか言われた後ずいぶん下火になってしまいましたが、アメリカの老舗としての貫禄は未だにあります。最近はスタッフも入れ替わり新しい技術も導入しずっと音程も良くなり元気な楽器になりました。独特のきめ細かく甘い中低音が魅力で、音楽のハートの部分を良く表現してくれます。ヘインズやパウエルを吹くとその味のある音色に、表面の技術でない職人の勘に頼った伝統の技の存在を意識してしまいます。 ブランネン いろいろな点で最高の楽器ではないでしょうか。キーメカニズムもよく考えられていて多少のサイドフォースがかかってもカップの動きを妨げない機構になっているし、タンポも先進的でいろいろな音を出す可能性がある楽器だと思います。しかしその分吹き手がしっかりとした音楽性とそれを実現するテクニックを持っていないと楽器に対してすまない結果になりかねません。音色は吹き手で決まるのであえてコメントはしません。納期はご相談ください。すぐに用意できるときもあれば、5年かかることもあります。 バーカート 3年ほど前にデビューした新しい楽器です。が、リリアン バーカートのご主人フェラン氏はかつてのパウエルの社長であり、リリアンはパウエルでピッコロの開発と頭部管の製作をしていました。当然かつての経験を生かし、最新のテクニックとメカニズムが導入され、最低でもパウエル以上の楽器をめざす意気込みで作った楽器なのでとてもハイレベルな楽器に仕上がっています。非常にパワフルで、レスポンスの良い中音域を持っています。相当力量のある奏者を想定して製作されているので、パッとわかるアピールが無く、私としては売りにくい楽器です。
頭部管 バーカート リリアンバーカートの頭部管のデザインは現在3種類あります。オールドパウエルスタイル(Tipe1)はその名の通り、60年代のパウエル自身のフルートような中身の詰まったクリーミーな音に、やや倍音が多くパワーを付加しています。バーカートスタイル(Tipe2)はバーカートのオリジナルデザインで、十分な音量と非常に腰の強い音がします。遠達性のある音で、オーケストラで吹いてもクラリネットから音が殺されません。ソナーレスタイル(Tipe3)はその名の通りとても大きい音が出せます。多少暴れ馬な所がありますが、吹奏楽には抜群です。
どのモデルにも共通して言えることは何よりも表現を重視した音づくりがしてあり、吹き方を間違えるとちょっと俗っぽくなってしまう危険がある反面、他の楽器にはない凝縮した表現の可能性があります。ラファン 近年もっとも評価の高い頭部管は間違いなくこのラファンでしょう。製作者自身がドイツのオーケストラプレーヤーで、ヨーロッパのオーケストラ奏者なら必ず持っていると言われるぐらいのものです。なんと言っても吹奏感が楽で、正確に演奏でき音もはずさない。フルートらしい美しい音色といいこと尽くめの頭部管です。ほとんどの人が吹いてみるとびっくりするぐらい上手になります。(ホント)
おすすめはどの材料のものでもリッププレートに羽根のようなのが付いたアドラーモデルがより息を効率的に音に変換してくれます。ただし、この頭部管になれてしまうと、他の頭部管では吹けなくなりそうでちょっとコワイですが・・・