まずはフルートの違いを作る要素と、それらがどの程度の影響をするかを見てみましょう。
演奏者
90%以上が奏者で決まる
いきなりなんだといわれそうですが、フルートの音を決定する最大のファクターは当然のことながら奏者自身です。「管楽器は吹き手の音がするが、弦楽器は楽器の音がする」とも言われます。
奏者が楽器を仕上げる
新品のフルートは半完成品だといえます。銀や金といった貴金属素材で長年の使用が可能なように高い精度で作られたフルートであれば、奏者が何年も吹き込んでいくと、素材に複雑な硬度変化の偏りやミクロの変形が生まれ、固有の音色と反応を作り上げていきます。良い状態で長年吹き込んだフルートは「笛が自ら鳴ってくれる」感覚になります。
メーカー・ブランド
メーカーごとに設計が異なるわけですから当然、素材が同じでも違いが出てきます。
頭部管
頭部管の設計は音に対して非常に影響力を持ちます。頭部管のカットの違いは、材質やオプションの影響よりはるかに大きいものです。ですから頭部管専門のメーカーも存在するわけで、同じ楽器でも頭部管を買えることで全く別の楽器のようなパフォーマンスを示します。
スケール
トーンホールの位置は、設計上の重要なポイントです。なぜなら音程のみならず音色に多大な影響を与えるからです。音程については国産と外国製の高級品には問題となるような設計のものはありませんから、危惧する必要はありません。ただし、音程の傾向は各社特徴がありますから慣れが必要です。たとえばプロにも絶大な信頼のあるムラマツとパウエルでは、中音域は正反対といえるような音程傾向です。しかし、慣れればどちらも正確に吹きやすく、吹き方の違いが音色の違いとなって現れます。
メカニズム
メカニズムも頭部管ほどではありませんが、共鳴体として音に影響を及ぼします。最近では目に触れることのないキーカップの内側を削り出しで作った物もあり、重量も増えて響きが豊かになっています。
パッド
ムラマツは独自のパッドを使っていますが、その他にもストロビンガーパッドやシリコンパッドなど伝統的なフェルトとスキン以外の素材のものもあります。真鍮のケースに入ったムラマツのパッドは深みのある音、軽量なストロビンガーは華やかな音がしますし、伝統的なパッドは柔らかく、シリコンは音のつながりが明瞭になります。
その他
その他の設計に関する要素としては、シャフトの材質、反射板、などがありますが、影響は小さなものだといえます。
材質とそのバリエーション
フルートの材質の種類
現在のフルートに使われているのは金、銀、洋銀、プラチナ及び木があります。それぞれに固有の音色と吹き心地があり、金は9金と18金では金の含有量が37%と75%と大きく違いますので、別の材料と考えて良いほど違いがあります。それに対して銀の場合はスターリングシルバーとブリタニアシルバーとを比較しても2.5%の違いしかありません。詳しくは「材質の違い」をご覧ください。
影響の度合い
結論づけると、最大の違いが出る演奏者を別にすると、音と吹奏感に最も影響のあるのは頭部管で次に材質であり、これらでほとんどが決まり、スケールによって操作性が変わると考えて良いと思います。
そして最も大切なのはそれらの要素のバランスと相互作用がうまくいっているかです。